似たもの同士【28】〜運転免許〜
2019年 07月 21日
この「所属先がない」というのは、なんとも心細いものです。
高校生ならば学生証がありますが、彼には身分証明書は写真の付いていない「健康保険証」しかありません。
12月には彼は18歳になるのでした。
そこで私は運転免許を取得すればいいと思いつきました。写真付きの身分証明書を自力で手に入れることができるではないか!
幸い我が家のすぐ近くに、彼の兄と姉も通ったドライビングスクールがあります。
11月末から通えば、まだ空いている時期。
これは名案だ!
と、テンション高く勧めることはせずに
淡々と次男に提案したところ、淡々と承知したので、入校手続きをしました。
「淡々と」
これは私の頭の中のキーフレーズになっていました。
そもそも私自身にもっと落ち着いた言動が必要だったのです。
彼の不機嫌さは、冷静沈着な自分の隣ではしゃぐ私が不快だったことにほかなりません。
ところでこの時私は、ただ「運転免許を取得するところ」と思っていたのですが、考えてみれば通うのは自動車「学校」だったのです。
次男は実は2年半ぶりに「学校」に通うことになったのでした。
この頃、昼夜逆転、というわけではなかったのですが、睡眠時間はバラバラでした。
入校手続きしたものの、ちゃんと行くのかなとちらりと不安になりましたが、とりあえず大丈夫でした。
「車の運転ができるようになる」という具体的な目標ができたことが良かったのだと思います。
実車教習に進んだところで、ある日彼は寝坊して遅刻してしまいました。
実車教習は、5分遅れるとその時間はキャンセルとなってしまい、1000円のキャンセル料が発生します。
たったの5分で…と彼が教官に言ったところ、「教習は決められた時間でこなさないといけない、危険にもなるから遅れてきたらもう出られない。」と厳しく言われたとのことでした。
納得した彼はキャンセル料を払って、予約をし直して帰ってきました。
それからは遅刻しないことを心がけるようになりました。
この時の教官の方には感謝です。
規則だから、ではなくてきちんとした理由を説明していただいたから納得することができたのです。
中学でも、高校でも、彼は自分が戸惑ったことについて納得することができませんでした。
その訳は言わずもがなです。
失敗はある、しかしそこで納得が得られれば学ぶということ、そして具体的な目標や事実が彼には必要なのだと、私も学ぶことのできた自動車学校の1ヶ月半でした。
18歳の誕生日が過ぎ、次男は運転免許証を取得しました。
この時彼は、とても嬉しそうでした。
自分の力で(費用はさておき)つかみ取った公的な身分証明書です。
私も嬉しかった。
一緒に喜べることが、嬉しかったのです。
単純ですね。でもこんな些細なことが、嬉しいのです。
そんな日が来るのかと思っていた頃もあったから。
しょこトラ 水元晶子
〜明日に続きます〜
【1】〜【27】はカテゴリー「回想記」の中にあるので、よろしければご覧ください。