ほのかに雲を焦がす光の中、ちぎれた風を髪に纏い、ペダルに体重をかける。昨日はあまり寝ていない。脳をリフレッシュするために車輪を回す。爽やかな朝である。そこではいつも意識が覚醒する錯覚を覚える。心が朝焼けに澄んでいく。僕は一瞬、ほんの一瞬、生きているんだという、不確かな実感を得る。これもまた錯覚である。実際は何をしたわけでもない一日から逃げて、誰もいない道を家に向かって。家について布団に潜り込む。何もかもが溢れかえった部屋の中で、またほんの一瞬ではあるが、漠然とした不安に閉じ込められる。今まで当たり前に走り続けてきた大地が、ほんの少し進むとぷっつりと途絶えた崖になっている、そんな気がする、あくまでも漠然とした不安。それを振り切って目を閉じる。眠ればいい。眠ればすべて忘れるんだ。
くにトラ息子
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