前川さんを呼びに ~神戸珍道中秘話~
2018年 12月 02日
昨年の秋ごろ、サントラは集まって話し合っていた。ていうか、まだサントラや咲くふぁ福岡という言葉すら生まれていなかったころ。不登校のことを多くの人に理解してほしい。そのために「前川喜平さん、福岡で講演してもらえたらいいねえ」
三人で考え込む。でも、どうやって?
しばらくしてfacebookで目にした講演会案内の記事。12月半ばのある日だった。1月16日に前川さんが、神戸で教育に関する講演をなさるらしい。ああ、せめて聞きに行けたらいいなあ。
年が明けて、だんだん行かなきゃいけないような気持になってきた。思い切っていこうと思ったのは講演会の直前。「私、行こうと思う」と、二人に告げる。二人はどうしても都合がつかない。しょこトラ、さなトラの気持ちも一緒に持って行こう。
そして、1月16日、神戸へ。晴れた、暖かい日だった。
早起きして新幹線に乗る。さなトラから、「めいっぱいおしゃれして行きなさいよ。目立った方がいい」と言われていたので、赤っぽい服を着て頑張ってみた。でも、化粧するのを忘れて出発したのに気がついたのは、ずいぶん経ってから。
時間が来るまでしばらく北野異人館街を歩いてみる。聞きしにまさる急な坂だ。でもなんて素敵な街並みなのだろう。奇しくも1月16日は阪神・淡路大震災の前日。厳かな気持ちになる。
方向音痴なので、道を間違えるととんだことになる。当日整理券が配られる方式だから、早めに並ばなければ。私が行く前に満席ともなれば、福岡から来た意味がなくなってしまう。にもかかわらず、オランダ館で香水の調香を頼んだりして、初めての神戸にしばし浮かれる私。
さあ、行こう。並ぼう。
迷いながらもなんとか会場に着くと、まだ時間に余裕があったせいか思いの外すんなり整理券を受け取ることができた。そのついでに受付の方に話しかけてみた。「福岡でも前川喜平さんに講演していただきたいと思ってるんですよ~」
自分でびっくりするほどすらすらと言葉が出た。さなトラ推しのおしゃれが手伝ってくれたか。それともしょこトラがのりうつったか。すると受付の方が、主催責任者のNさんを呼び出してくださった。現れたNさんに同じことを話すと、彼女は唐突に言った。「ねえあなた、書くもの持ってる?」
一瞬意味が分からない。Nさんは続ける。「今ここで手紙を書きなさい。なぜ福岡で講演会をしてほしいのか書きなさい。そしたら本人に渡します」
はい、あります、書きますっ。Nさんが放つオーラに圧倒されて答える。でも持っているのはB5の大学ノートとシャーペンだけ。ええい、ままよと書き始める。客席に座ったまま膝の上で書く。息子と不登校のことや、不登校について多くの人に知ってほしいこと、講演の準備は今から仲間の輪を広げて何とかしますとか、とにかく今まで思い続けてきたことをシャーペンでノートに。夢中になって。書いているうちに本当になんとかなるような気がしてきたから不思議だ。
書き終わると受付に戻り、カッターを借りてその数ページを切り取り、記録の写真を撮る。忙しく立ち回っているNさんをつかまえて渡す。あとは野となれ。
会場はいつの間にか満員になっていた。今日は平日なんだよね。熱気すごい。そして講演が始まった。
不登校のことや夜間中学のことなど、深い知見と心のこもったお話を聞くことができた。前川さん、感謝。
また思いがけず神戸の講演会スタッフの方々とふれあうことができた。ただありがたかった。神戸に来てよかった。帰路は、高ぶった気持ちを落ち着かせる時間となった。
後日、前川さんから福岡で講演会をいたしましょうとお返事をいただく。そのときのサントラの様子を想像してください。
そこから、改めて咲くふぁ福岡を立ち上げる。手探りで実行委員会の結成。しだいに協力してくださる方々が増え、さらに金銭的には一般財団法人グリーンコープ生協ふくおか様からの助成をいただくなど、輪が広がっていった。
大切に温め育ててきた講演会。不登校で悩む方々がほっとしてくださればうれしい。そして、ここからさらに不登校をご存じない方にも理解をいただければ…。
いよいよ今度の土曜日、12月8日です。福岡市中央区天神、都久志会館ホール。
神戸の講演会から始まった、そのさまざまを今、思い出して。
くにトラ
HPもご覧ください。
http://sacfa.yubunsuzuki.com/